ミネラルファンデーションの構成について

「実はうちの子会社のひとつが今度、アンチ・エイジングの化粧品を出すのですが、その臨床テストに参加してくれる人を探しているんです」日本でもここ数年で広まった「アンチ・エイジング」私がこの言葉にはじめて出会った、「肌の老化」なんて先のことだと思っていた二○代のころ、一九九一年、アメリカ滞在アメリカで出会った「アンチ・エイジング」「えっ、アンチ・エイジング?それって何ですか?」「ああ、Sさんはまだお若いから知らないですよね。

簡単にいうと老化防止化粧品とでもいったらいいのかなあ。 これからはそういう部門が伸びると思って、いまうちの研究所でもいろいろ研究しているんですよ」「それ、私じゃダメですか」するとそのCEOは、まじまじと私の顔をのぞき込み、こう言った。
「う−ん、まだ早いでしょ?Sさん、まだ二○代でしょ?」「ええ、一応。 でも私、昔から化粧品にはすごく興味があっていろいろなものを試してきたし、そういう臨床テストってなかなか経験できないですよね」「でも、佐藤さんの年齢だと、若すぎて効果がわかりにくいと思いますよ」彼はとても困っていた様子だったが、結局私のしつこさに根負けし、私は臨床テストを受けることになった。
私はテストの際、研究所のドクターから化粧品のつくり方や有効成分などについて根掘り葉掘りたずねた。 彼らにとっては迷惑だったことと思うが、この体験が、その後自分が肌老化を気にする年代になったとき、またいまの仕事をするに至って役に立ったのは、いうまでもない。
何を隠そう、私はかってとんでもないコスメフリークだったのだ。 二○代前半のころの私は、とにかく新しいモノ好きで、雑誌で何やらよさそうなものがあると即買いに走り、飽きるとまた別のモノを試す、これをくりかえしていた。
おかげで部屋の隅にはいつも使わない化粧品が山積みになっていた。 友人にも何人かそういうタイプの子がいて、会えば話題はもちろん化粧品のことばかり。
「×××の新製品使った?どう?効く?」などと、いつもコスメ談義を交わしていた。 そんな友人と意見が合ったのが、こんなコスメのミステリー話についてだ。
「化粧品って、使いはじめはすごく効く気がするのに、だんだん肌が慣れちゃって効かなくなるでしょ。 だからまた新しいものを買っちゃうんだけど、これってどうしてなのかなあ」最近でも、このミステリー話は女性誌の化粧特集などでたまに見かける。
余談だが、基礎化粧品はあまり替えないほうがいい。 化粧品の効果は、肌細胞が生まれ変わる周期(約二八日)から考えても少なくとも一ヵ月、できたら三ヵ月はみたほうがいい。
次の日即効で効果が出るというのは表面(角質レベル)で感じるだけで、肌の内部から状態が変わるのが次の日なんてことは、副腎皮質ホルモンでも含まれていないかぎりあり得ないのだ。 そもそも、ある化粧品を使いはじめて、しばらくすると肌に慣れてしまう気がするのは、その化粧品の持つ有効成分に肌がやっと慣れたということで、けっして悪いことではない。
刺激ばかり与えていては、そのたびに見えない部分で活性酸素が生じ逆効果だ(とはいっても有効成分がほとんど入っていないようなものの場合は話は別)。 脱線したが、それにしても、ほんとうに意味ないことをしてたなあと思う。

まだ二五歳なのに三○代後半の人が使う化粧品を、二万五○○○円も出して買っていたなんて。 効果はよくわからなかったが、年齢がいってから使うものなんだから、きっと肌にいい成分がたくさん入っていると私は信じ込んでいた。
そんな私を百八十度変えてしまったのが、アメリカ滞在中の化粧品の臨床テスト参加という出来事だったのである。 しかし化粧品というものは、ほんとうに次から次へと、毎月新しいものが登場する。
ほんとうに広告でうたっているような効果があるのなら、ベストセラー商品。 市場に出回ってもよさそうなものだが、残念ながら五年どころか、三年も同じような話題をさらい、同じようなセールスを記録しているものは驚くほど少ないのが現状だ。
結論からいって、化粧品というものの効きめは比較的マイルドだとはじめから思って使ったほうが無難である。 別に私は化粧品会社を敵に回す気もないが、化粧品というものは万人の肌に合うようにつくられているものであり、ゆえに有効成分の配合量も少なく、濃度も低くなっている。
低くなっているということは、当然、効果も薄くなるが、その半面、赤くなったり、かぶれたりといった副作用は少なくなる。 これは、化粧品というものの宿命でもあって仕方ない。

だから、それに満足しない私のような人間は、薬品を使うか、もしくはいわゆる美容外科でおこなっているような若返り療法に頼るしかないことになる。 ひと口に肌老化といっても、シミやくすみ、シワ、たるみと症状は多岐にわたるし、その状態や程度によってどんな療法が効果的かは変わってくる。
もちろんひとつの療法ですべてに効果を上げるということは不可能である。 私が、とにかく消したくて消したくて仕方なかった、鼻から口にかけてのシワ.いわゆる鼻唇溝。
通常は目尻の小ジワから気になりだすという女性が多いが、私の場合は、豊かすぎる表情のせいで癖ジワもできやすかったのか?目尻の小ジワはまだ、笑ったときにできるだけだからいい。 鼻唇溝の場合は、笑っても笑っていなくても目立つのだ。
また、遠目からでも。 それに、これがあるかないかで顔の〃老け加減″はひどく変わる。
たとえば、漫画で一○代の少女を四○代以上のオバサンに老けさせるにはどうするかというと、鼻の下から口にかけて丸くシワを描けばいいのだ。 それくらい、ここのシワは人の見た目年齢を変えてしまう。
さらに厄介なことに、ここのシワはハッキリいってまず化粧品では歯がたたない。 化粧品ですぐ効果が出るのは、あくまで乾燥によるシワであり、鼻唇溝のようないわゆる癖ジワはたるみからきているケースが多く、真皮または筋肉レベルの話になってくるため、化粧品が効果を発揮するのはまず無理だ。
でもどうにかしなければ。 それもすぐに、私は焦っていた。
なぜそんなに焦っていたのか?そう、私には、実はどうしても急がなければならない理由があった。 もちろん、仕事上のこともある。
ところがある日、その「期日」が一通の招待状によって決まった。 それは、一五年ぶりの大学時代のサークル仲間とのパーティーだった。

その仲間の中に、私の昔の恋人がいたのである。 私はその元カレにこれだけは思われたくなかった。
女が昔の男に会っていちばん思われたくないこと。 それは「コイッも老けたな…」これしかない。
はじめてのコラーゲン注射に踏切る。 サークルの集まりは、二ヵ月先の予定になっていた。
私は思った。 このままの老け顔ではいけない。
この二ヵ月で、どうにかしてある程度のもとに戻さなくちゃ……。 このままでは必ずあいつに老けたと思われる。
それじゃ、あいつの言っていた通りになってしまう。 彼は昔、私にこう言い放ったのだ。
「女が確実に老けてくるのはやっぱり三五歳からだな」私はずっと、ずっとその言葉を忘れなかった。 よし、それなら三五歳になったら、いまよりもっときれいになってやろうじゃないの!私はちょうどその三五歳だった。

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